ドンブラッコ
01_民宿=「狭い・汚い・気を遣う」のイメージは本当?
更新日:2021年1月24日
気乗りしなかった、はじめての民宿。
大学2年生の頃、環境教育の先生から民宿に行かないかと言うお誘いを受けた。どうも福島県郡山にある田んぼが持てる農家民宿(遊雲の里:https://www.tif.ne.jp/fuku-gt/guide.html?id=447)でお米を育てているらしい。車で行くのに、2人で行くのはもったいないので一緒に行かないかという話だった。
お誘い自体はすごく面白そうなので行ってもいいかなぁと思っていたが、いかんせん「民宿」というのが心に引っかかっていた。なぜなら、どうしても他人に気を遣ってしまう性格だからだ。
「民宿」に対するイメージは良くなかった
そもそも「民宿」というのは他人のお家に泊めてもらうのであって、そこの家のしきたりとかスケジュールを無視して自分で自由にやっていいようなところではない。それに、当時の私の勝手なイメージ(幼少期に構築されたと思われる)では、結構ぐいぐいくる系のサバサバしたおばさんとかおじさんが出てきてあれこれ指図されたり、怒られたりするもんだと思っていた。ご飯もいわゆる家庭料理で、水回りとかもちょっと不潔で、全体的に汚いみたいな最悪なケースを想像していた。(言葉にするとひどいな・・・)
・・・・でもだとしたら、そんなところにわざわざお金を払って泊めてもらうというのは、一体全体どこに良さを見出しているのだろうか?安さか?
それとも私が知らないだけで、先生ご夫妻が魅了されるだけの良さがあるのカナ!?
そう思い、試しについて行ってみることにした。
想像以上に田舎
東京から車で何時間走っただろうか、とにかくどんどん田舎に進んでいく。高速道路を降りて道は細くなり、お店も見当たらなくなり、ついには民家さえも見当たらなくなった。周りは田んぼと竹林と見渡す限りの山々のみ。親戚がいて里帰りするという用事がなければ絶対にくることがなかったような土地だ。
教科書で見るような見本的な日本の田園風景。なるほど、すごいところに来てしまったと思った。
着いたところは「THE おばあちゃんち」!?
民宿といえど、簡易宿泊所だからちょっとは宿泊施設っぽい感じのところを想像していたら、蓋を開けると本当に「人ん家」で驚いた。ちょっときれいで広い普通の民家。入り口が引き戸で、玄関に木のオブジェとか屏風絵とかある感じのTHEおばあちゃんち。
なのに、人の家に来ているという嫌な感じがしないのは、不思議。明るくて、じめっぽい感じがしなかったからだろうか?
もっと寂れていて小汚くて、これから1日ここで過ごすのかーと入るなりテンションが下がるような宿を想像していたので、むしろ「おばあちゃん家みたいで懐かしい感覚!」と感じた。幸先のいいスタート。
人見知り発動
でも民宿のサービスはホテルのそれとは勝手が明らかに違うので、私のような民宿ド素人は「荷物どうしたらいいの?」「トイレいきたくなったら勝手にいっていいの?」「出たり入ったりしていいの?」という迷いが生じてしまう。オーナーさんに聞けばいいものを、いちいち聞くのは迷惑かな?とか思ったりして聞き出せず先生に逐一確認してもらう人見知りっぷり。
それからしばらく勝手がわからず狼狽する私・・・。
心配していた水回り問題
それでもトイレへはいきたくなるので、家の中をウロウロしていると、トイレとお風呂を発見!!それも公衆トイレくらいの使い古された感を想像していたけれど、どちらもすごく綺麗でピカピカで、おまけに便座があたたかい!これは非常にポイントが高い。水回りがきれいだと安心する。
民宿素人、ひとりで困惑
ずっとトイレにいたいくらい、民宿での振る舞い方がわからない私にとっては何をしてはいけなくて、していいのかすらわからない。ウロウロおろおろするばかりで、いっこうに落ち着けない。オーナーさんに「なにをしていいのですか?」なんて聞くのは変だし、「くつろいでくださいね」と言われても本当にくつろいでもいいのかもよくわからない。最初は何をしたらいいかわからない不安さで常に気を張って周りをキョロキョロ見回してしまうことを多少ストレスに感じていた。
「民宿=気を遣う」と思っていた正体は・・・
そんな時、オーナーさんが「出身はどこなの?」とか「何を勉強しているの?」と話を振ってくださった。おろおろする私はオーナーさんについて行くことしかできなかったが、何気ない身の上話に応えているうちに、自然とオーナーさんとも喋れるようになっていた。
喋れるようになると、あんなにストレスに感じていた「何をしたらいいかわからない不安さ」も、会話を交わすことで自然と薄らいでいくような感覚があった。
落ち着かない気持ちにやきもきしてしまう主たる原因は、絶対的なコミュニケーション不足だったのだ。「気を張らないといけない=気を遣う」と勝手に解釈してしまっていたのは頭の中の自分だったというわけだ。
実はオーナーだって不安
オーナーさんだって私たちと同じように、どんな人が来てくれるのだろうか?と少なからず不安に思っている。その人がどんなことをしたいと思っていて、どんな時間を過ごしたいと思っているのか、できれば知って力になりたいと思っているはず。
だからこそ、自分のためにも相手のためにも勇気を持って自分をさらけ出すことで民宿をより一層楽しめるのだと思った。
はじめての民宿を体験して・・・
私にとっての初めての民宿視察は、予想外に充実したものとなって終わった。実際のところは水回りも綺麗で、家も明るくて広かったし、想像していた実態と全く違っていた。ご飯もボリューム満点でとっても美味しかった。特に奥さんの特製おこわは作り方を聞いて帰ったほど!
おじさんも気さくで面倒見がよくて、自然のことをとても大切にされているのが伝わってきた。この里全体がこの民宿によって潤っているのだと改めて実感した。
最後に、オーナーのおじさんが「こんなところまで学生さんが来てくれるなんて感激。今度里のお祭りがあるからぜひ来て欲しい。」と言ってくださり、それからメールを何度かやり取りする仲にもなった。
いまでも年に一回ほど、友達や研究室の同期と一緒に里帰りのような感覚で行っている。
<わたしの初めての民宿>
▶︎遊雲の里:https://www.tif.ne.jp/fuku-gt/guide.html?id=447
公共交通機関で行くなら、郡山→二本松駅まで行ったらお迎えきてくれます^^
お米づくりをされているので、出来立てのおこわやお餅が食べられます!!
夏はホタルを見ることができ、ビオトープではトンボやカエルといった生き物に触れ合えます。
今後の研究につながる大きな発見
わたしにとっての初めての民宿体験。
初めは戸惑いの連続だったが、帰る頃にはホテルや旅館では感じたことのないような「愛着」を感じていた。この、民宿が持つ「愛着」という魅力は、画一的なサービスをお金で買う一般的な宿とは明らかに一線を画していて、ものすごいポテンシャルを秘めていると確信している。
この素晴らしいポテンシャルを秘めた「民宿」の良さを、デザインによってどう世の中に伝達していけるか?本気で考えるきっかけとなったのだった。